階段形状不可能図形のアニメーション手法
不可能図形とは,一見すると,実現可能なように見えるが,実際には人間の視覚が解釈した通りには実現不可能な錯視図形のことである.不可能図形をモチーフにした芸術作品は、Maurits Cornelis Escherを代表とする多くの芸術家たちによってつくられ,人々を魅了している. 近年,CGによって不可能図形を表現することで,様々な角度から見ることを可能にする研究が行われている.その一つに,錯視立体を用いる手法がある.錯視立体とは,ある特定の視点から投影した時のみ,不可能図形として成立するように作られた立体のことである.錯視立体が成立したときの視点を錯視視点と呼ぶ.錯視立体は,錯視視点から視点が移動すると,不可能図形として知覚されなくなる. 我々は,錯視立体を3次元形状モデルとして扱い,錯視視点位置に合わせた幾何計算結果を用いたモデリングを連続的に行う手法を考案した.これによって四角いひねりを加えたトーラス状不可能図形を任意の視点から見ることができる対話型アニメーションが可能となった. 本稿では,従来手法を拡張し,より複雑な形状である階段形状不可能図形に適用したところ,良好な結果を得られたので報告をする.